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タニシ

記事Jun. 3rd,2018
Jun. 1st,2021
ベランダビオトープの掃除屋であり、水質の浄化にも貢献してくれるタニシの飼育方法。

“タニシ”とは?

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タニシ

タニシは腹足綱原始紐舌目タニシ科に属する巻き貝の総称です。南米と南極を除き全世界の淡水域に生息し、日本にはマルタニシ、オオタニシ、ナガタニシ、ヒメタニシの4種が生息しています。田んぼや用水路、池などに生息する身近な存在です。

タニシ

タニシの特徴はその食性です。

刈り取り食
物の表面に生えた藻やコケを削り取るようにして食べます。
デトリタス食
水の底に沈殿した生き物の排泄物や死んでしまった生き物を食べます。
濾過摂食
水中を漂うプランクトンや養分をエラで濾し取って食べます。
裏側から見たタニシ

このような食性からビオトープや水槽でもコケ取りや水質の改善を目的として掃除屋として飼育されることが多いです。

タニシは雌雄異体で卵が孵化するまで体内で守り、稚貝を直接産む卵胎性という繁殖形態を取ります。なので卵を産むほかの巻貝に比べると増えるスピードは緩やかです。

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基本情報

大きさ

アクアリウムやビオトープなどでよく飼育されるヒメタニシはタニシの中でも小型で最大3.5cm程です。比較的大型のオオタニシは6.5cm程になります。

寿命

タニシは2年から長いと4年ほど生きます。

遊泳層

飼育容器の底や側面、水草などにくっついて生活します。

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ベランダビオトープで飼育するメリット

コケやエサの食べ残しなどを食べ、濾過摂食で水中に浮遊する養分なども摂食して水質浄化にも役立つタニシはベランダビオトープでメダカとともに飼育するのにおすすめの生き物です。

ベランダビオトープのタニシ

タニシは水田や用水路などでもよく見かけることができる生き物なので野外にあるビオトープで容易に飼育することができます。また、ビオトープ内での繁殖も可能ですが、繁殖する速度は緩やかなので増えすぎて手が付けられなくなるということもありません。

茶ゴケを食べるタニシ

屋内の水槽ではコケ取りに石巻貝やフネアマガイが飼育されることが多いですが、屋外にあるビオトープではタニシが最適です。これらの巻貝に比べてコケ取りの能力は少し劣りますが濾過摂食によって水中を浮遊するアオコなどもを食べてくれるのでアオコの発生しやすいビオトープではとても重宝されます。

また、巻貝は種類によってはひっくり返ると自力で起き上がれず死んでしまうこともありますが、タニシはひっくり返っても自力で起き上がることができ、あまり手間がかかりません。

起き上がろうとしているタニシ

飼育環境

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水槽・飼育容器

飼育容器や底床は特に選びません。水量は1匹につき1Lほどあれば十分ですが、大食漢なのでエサを与えずに飼育したい場合には飼育数が多すぎるとエサが不足する可能性があります。

積極的に脱走することはありませんが、水面近くまで登ってくることはあるので、水を飼育容器の縁ギリギリまで入れていると誤って容器の外に落ちてしまう可能性があります。

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飼育水

タニシの飼育に適した水質はph5~9程度、弱酸性から弱アルカリ性まで比較的幅広い水質に適応します。汚れた水が流れ込む用水路などでも生息していることがあるのでそれほど水質に気を使う必要はありませんが、弱アルカリ性の方が繁殖と成長は活発になります。また、多くの貝類と同様あまり酸性に傾きすぎると貝殻が溶け出して死んでしまいます。

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水温

タニシを飼育するのに理想的な水温は18~28°Cぐらいですが、0°Cに近い水面が凍りつくような低温から30°Cぐらいまで耐えることができますので屋外でも問題なく飼育できます。

ただし、10°Cを切ると土の中に潜り、殻に閉じこもって動かなくなる冬眠状態になります。暖かくなるとまた動き出しますので死んでしまったと思って簡単に捨ててしまわないよう気をつけましょう。

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エサ

自然に生えたコケや藻、魚などと一緒に飼育していればそれらのエサの食べ残しや排泄物を食べますので特別エサを与える必要はありません。

タニシは大食漢なのでコケが少ないきれいな飼育容器や飼育数が多い場合はエサが不足する可能性があります。魚用の沈下性の人工エサを与えるのも良いでしょう。

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繁殖

繁殖方法

オスとメスがいればとくに何もしなくても繁殖します。野生のタニシの繁殖期は6月から8月ごろと言われています。水温が20°Cを超えると繁殖しはじめ、25°C前後でもっとも活発になります。卵を産まないので突然小さなタニシが飼育容器内に現れることが多いです。タニシの稚貝は5mm程の大きさで、貝殻がやや透けていますが親タニシと変わらない形をしています。

タニシの稚貝

オスとメスの見分け方

タニシのオスとメスは触角で見分けられます。メスは左右ともほぼまっすぐですが、オスのタニシは生殖器として使われる右の触角がカールしています。

オスのタニシ
メスのタニシ
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混泳

同種との混泳

問題ありません。

他の観賞魚との混泳

コイやフナ、金魚などの口の大きさがタニシよりも大きい魚はタニシを食べてしまうことがあります。

屋外飼育の春夏秋冬

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冬の間冬眠状態にあったタニシは活動するようになります。水温が上がっていくと摂食量が増えていきますので、コケなどの食べれるものが少ない場合にはエサ不足に注意が必要です。

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6月から8月ごろ、水温が20℃を超えるようになると繁殖するようになります。オスとメスがいてエサが十分にあれば自然と繁殖が行われます。

タニシが底床に潜っている場合には高すぎる水温から逃れようとしている可能性があります。また、複数のタニシが水面近くまで上がってきている場合は水に溶け込んでいる酸素量が不足している可能性があります。

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水温が下がってくると徐々に活動量が減っていきます。

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水温が低くなり、10°Cを切ると殻に閉じこもって冬眠状態となります。低水温でも底床に潜る性質があるので潜りやすい土が敷いてあると越冬しやすくなります。

その他

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それ本当にタニシ?“スネール”とタニシ

インターネット上には「いつの間にかタニシがいた」、「水槽にタニシが自然発生した」、「タニシが卵を産んだ」などという投稿がよく見られますが、これらはほとんどの場合“スネール”と呼ばれる生き物です。

アクアリウム界隈では意図せず水槽に持ち込まれる巻貝のことを総称して“スネール”と呼んでいます。サカマキガイやモノアラガイがその代表例ですが、見慣れない人はそれらの貝をタニシと勘違いしてしまうこともあります。

タニシと“スネール”(モノアラガイ)
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タニシではない“ジャンボタニシ”

ペットショップなどで見かけることのある“ジャンボタニシ”は“タニシ”と名がついていますが本来はスクミリンゴガイと呼ばれる外来種の巻貝であり、タニシとは別種です。

特徴的な鮮やかなピンク色の卵の塊を植物や用水路の壁面などの水面から離れたところに産み付けることで知られるスクミリンゴガイは繁殖力が強く、一部の地域では野生化したものが田んぼの作物を食い荒らすことで問題となっています。飼育下でも水草などを食害しますので注意が必要です。

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このタニシ、死んでいる?

タニシは殻に蓋を持っていて、冬眠状態にある場合や危険を感じた時には殻を閉じてその中に閉じこもります。また、水質に問題があると殻にこもって耐えたり、さらに特に問題がなくても殻に閉じこもってしばらく動かないこともあります。

蓋を閉じた生きているタニシ

殻の中に閉じこもってしまっていると生きているのか死んでいるのかの判別が難しいですが、タニシが死んでいるかを判別するためのポイントを紹介します。

蓋がない
蓋がなければすでに中身は他の生き物に食べられてしまっているか、腐ってなくなってしまっています。
悪臭がする
タニシに限らず、貝は死ぬと悪臭がします。水から取り出して腐臭がする場合は死んでしまっています。
殻に穴が開いている
殻が薄くなって穴が開いているようであれば死んでしまっています。水質がタニシの飼育に適していない可能性もあるので対策が必要です。
エビが集まる
ミナミヌマエビなどは生きたタニシの殻に付着したコケを食べることもありますが、あまりにもたくさんのエビがタニシに集まるようであれば死んで腐敗が始まっています。
光が透ける
タニシの殻を日にかざしみて蓋が透けるようであれば死んで中身がなくなっています。
死んでしまったタニシに集まるエビ

蓋を突いたり、こじ開けたりすると怪我をして死んでしまう可能性があります。どうしても判断がつかない場合は別の容器に取り出してみて何日か様子を見てみるのも良いでしょう。

残念ながら死んでしまったタニシの殻はそのまま飼育容器に入れておけば残ったタニシのためのカルシウム補給源となったり、酸性に傾いた水質の改善に役立ちます。ただし、腐敗した中身は水を汚すので残すのは殻だけにしてください。

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タニシの採取

大抵の熱帯魚店に行けばタニシは販売されていますが、用水路や田んぼなど身近な場所に生息しているので野生のタニシを採取することもできます。

タニシがいる田んぼ

ただし、いくつか気をつけなければいけないことがあります。

一つは、採取した巻貝が本当にタニシなのかということ。前述したようなスネールやジャンボタニシをタニシだと思って飼育容器に入れると大繁殖したり、水草や植物を食べ尽くしてしまったりと問題を起こす可能性があります。

もう一つは予期せぬ病気や寄生虫を持っている可能性があるということです。もちろん店で購入したタニシが絶対病気や寄生虫を持っていないかといえばそうではありませんが、野生のタニシを採取する方が病気や寄生虫を飼育容器に持ち込んでしまう可能性は高くなります。また、田んぼで使用されている農薬などが混入して他の生き物に影響を与える可能性もあります。

タニシを他の巻貝と見分ける自信がない人や、飼育容器に導入する時にトリートメントをするのが面倒という人は店で購入した方が良いでしょう。

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