メダカの繁殖
産卵の条件
オスとメスがいる
当然のことながら、オスだけやメスだけしかいなければ繁殖することができません。最低でもオスとメスが1ペアいることが必要になります。
メダカにも相性のようなものがあり、オスとメスがいれば絶対に繁殖行動をしてくれるとは限りません。オス1匹に対してメス2匹がいるのが理想的と言われ、少なくとも数ペアいれば繁殖の可能性が高まります。
水温
メダカは水温がだいたい18°C以上になると繁殖行動をとるようになり、20°C以上になると安定して産卵するようになります。適温は25°C前後といわれています。水温が30°Cを超える真夏は繁殖はあまり活発ではなくなります。
飼育下でもこの条件を満たすことで繁殖行動をとるようになります。屋外飼育では春から夏にかけて条件を満たすようになりますので自然と繁殖行動をとるようになります。屋内水槽では冬もヒーターで水温を保てば季節に関係なく繁殖させることができますが、一年中繁殖活動をさせたメダカは寿命が短くなる可能性があります。
日照時間
メダカは昼間の時間がだいたい12時間以上になると繁殖行動をとるようになります。繁殖に最適な日照時間は14時間程度といわれています。屋内の水槽でも照明時間を12~14時間にすれば繁殖します。長ければいいというものではなく自然界と同じように夜の時間を作る必要があります。
栄養状態が良い
メダカが繁殖行動を行うには大きなエネルギーを必要となります。オスのメダカの栄養状態が良くないと求愛行動をとりませんし、メスのメダカの栄養状態が良くないと交尾行動をしても産卵しなかったり、産卵しても卵が少なかったりします。また、孵化した稚魚の成長にも影響することがあります。
メダカが痩せている場合にはエサを増やさないと産卵しない可能性が高いです。増やす場合は1回に与える量を増やすのではなく、食べ残しに注意して回数を増やして少しずつ与えます。メダカが食べる量が増えると当然排泄物の量も増えますので水質にも気を付ける必要があります。
産卵
産卵の流れ
求愛行動
メダカの求愛はまれに昼間に見られることもありますが、ほとんどの場合夜明け頃に行われます。求愛行動はオスからメスへ行われます。体内で卵が作られておなかが膨らんだメスをオスが追いかけ、メスの下を円を描くようにぐるぐる回るように泳ぎます。このとき興奮したオスのメダカの胸ビレは黒くなります。
求愛行動はメスがオスを受け入れるまで行われます。ただし、求愛が必ず受け入れられるわけではありません。受け入れない場合メスは頭をあげて拒みます。断られたオスはそれでも求愛を続けることもありますし、あきらめて別のメスに求愛することもあります。
交尾行動
メスがオスの求愛を受け入れると動きを止めてオスとメスが寄り添うようになります。オスは背ビレと尻ビレでメスを抱き寄せ、交尾が行われます。オスは尻ビレを細かく震わせてメスに刺激を与え、産卵を促します。
産卵
メスが卵を産むとその卵にオスが精子をかけます。上手くいけば卵は受精卵(有精卵)になりますが、精子がかからなかった卵は無精卵となり、稚魚が生まれることはありません。交尾行動から産卵までは数十秒のうちに行われ、1回の産卵で10個程度、多いと20個ほどの卵を産みます。
メスはしばらくの間卵をくっつけたまま泳ぎ、しばらくすると水草などに卵をくっつけます。
産卵床
産卵床とは?
産卵床はメダカが卵を産み付ける場所のことです。交尾行動を終えたメスのメダカはしばらくすると産卵床に卵をくっつけます。
メダカは水草や石、人工物など何にでも卵をつけます。狙った産卵床に卵をつけてもらいたい場合には産卵したメスを産卵床以外何もない容器へ一時的に移すと良いでしょう。
産卵床に何を使えばいいのか?
天然の産卵床
屋外飼育ではホテイアオイが産卵床の定番です。水面に浮かび、水中に根を垂らすホテイアオイはメダカが好んで卵を産み付けます。水質浄化にも役立ち、安価なうえ1株入手すればそこからよく増えます。室内では光が足りず枯れてしまうのと、冬を越せないのが難点です。
屋内であればマツモがおすすめです。よく成長し、卵が産み付けられた部分だけを切り取って親メダカから隔離することもできます。
人工の産卵床
人工の産卵床は発泡スチロールなどの浮きにスポンジやネット、毛糸などを垂らしたものです。熱帯魚店などで販売されているものもありますし、自作することもできます。水草に比べるとやや高価ですが、耐久性があるものを選べば何年も使用することができます。
卵を孵化させるには
卵を採卵する
メダカは口に入るものは何でも口に入れてみる習性があるので、親メダカは卵や生まれた稚魚を食べてしまいます。なので飼育下で稚魚を育てる場合には生まれた卵を親メダカから隔離する必要があります。
卵を産み付けられた産卵床ごと別の容器へ移すか、卵だけをピンセットなどで採っても大丈夫です。採卵するとき卵をつぶしてしまわないか心配になるかもしれませんが、メダカの卵は意外と丈夫で指で軽くつまんだくらいでは簡単にはつぶれません。<
親メダカが産卵床に卵を産み付ける前にも他のメダカによって卵が食べられてしまったり、どこかへ卵を落としてしまったりする場合もあるので、確実に採卵したい場合には産卵したメスを別容器に隔離したり、卵をつけたメダカを掬って綿棒などで卵を採る必要があります。メダカを掬って採卵する場合はメダカに負担がかかり、傷つけてしまう危険もありますので注意が必要です。
孵化までの環境
飼育容器
卵を隔離する容器は100円ショップなどで手に入るプラスチック容器など、水が入れられる容器であれば何でも大丈夫です。生まれた稚魚を別の容器に移動させるのはリスクを伴うので稚魚が孵化してもからもそのまま飼育できる容器を選ぶのも良いでしょう。
飼育水
水道水をそのまま飼育水に使用するのは通常であればしてはいけないことですが、孵化前の卵は殻に守られているのでカルキ抜きしていない水道水に入れても大丈夫です。むしろ殺菌成分が含まれる水道水は卵にカビが生えるのを抑えたり、雑菌の繁殖を抑えてくれたりするというメリットがあります。カルキは時間とともに抜けていきますので定期的に新しい水道水と交換します。ただし、カルキは生まれた稚魚にとっては親メダカと同様有害なので、孵化が近づいたらカルキ抜きした水に切り替える必要があります。
水温と日照時間
水温は産卵の条件と同様で、25°C前後が適温です。あまり水温が低いと孵化に時間がかかるだけでなく孵化できずに卵がダメになってしまうことがあります。逆に水温が高すぎると孵化が早まりますが未熟な稚魚が生まれる場合があります。
日照時間も産卵の条件と同様で12時間以上必要です。直射日光が長時間当たるのは水温が上がりすぎるので良くありませんが、孵化には光が必要になりますので卵を入れた容器は適度に明るい場所に置き、光が当たらないようなら照明で代替します。
稚魚の飼育
稚魚の飼育環境
飼育容器
生まれたばかりの稚魚は成魚以上に水温や水質などの変化に敏感です。環境の変化は死んでしまう原因にもなるので、卵を孵化させた容器でそのまま飼育するのが一番安全です。
ある程度の水量がある容器の方が、水温や水質が安定しますので稚魚を育てやすくなります。大きな容器を親メダカとは別に稚魚用として用意するのが難しい場合には親メダカを飼育している容器の中にネットなどを浮かべて隔離するのも良いでしょう。
孵化した時期が異なる稚魚は体の大きさに大きな違いが出てきます。小さい稚魚がエサの取り合いになって死んでしまうのを防ぐためにある孵化した時期が違う稚魚は容器を分けた方が良いです。
飼育水
親メダカと同様に稚魚にとってカルキが含まれる水道水は有毒になりますので水道水を使う場合は必ずカルキ抜きをします。
水温と日照時間
水温は25°C前後が適温であまり大きな温度変化がないように飼育容器の置き場所には気を付けます。稚魚の成長にも日光が必要なので、直射日光による水温の変化に注意しつつも十分な光が当たるようにします。
稚魚のエサ
生まれたばかりの稚魚はおなかにヨークサックと呼ばれる栄養が入った袋がついていて、その栄養だけで生きます。なのでエサはヨークサックがなくなるまでの数日間は必要ありません。
稚魚が死んでしまう原因の大半はエサ不足によるもので、稚魚を育てるうえで最も難しい部分がエサやりです。
植物性のプランクトンが多く繁殖したグリーンウォーターで飼育するのが常にエサが豊富にある状態になるので最適です。少し成長してきたらゾウリムシやミジンコなどの活き餌も食べ残しても水質を悪化させることがないので良いです。
稚魚は口がとても小さく、親メダカと同じ大きさのエサは食べられません。人工飼料を与える場合にはすりつぶしてから与えるか、稚魚用の粒子が細かいエサを与えます。1回に食べられる量はとても少ないので、1日5回ほどに分けて少量ずつ与える必要があります。水を汚す原因になる食べ残しにも十分注意しなければなりません。
稚魚の飼育で注意すること
外敵
屋外でメダカの稚魚を飼育する場合、蚊の幼虫であるボウフラに捕食されないように注意する必要があります。親メダカにとってはエサとなるボウフラですが、小さなメダカの稚魚にとってはボウフラは捕食者となります。ボウフラはメダカの稚魚よりも成長が早いので、稚魚がいる容器で後からボウフラが孵化しても稚魚が食べられてしまう可能性があります。
また、親メダカと同様にヤゴなどの肉食性の水生昆虫やヒドラの混入にも注意が必要です。侵入できないように容器にネットなどをかぶせて対策をしたり、見つけたら除去する必要があります。
水流
稚魚は遊泳力が弱いので、フィルターやエアレーションによる水流があるとすぐに体力を消耗して弱ってしまいます。また、稚魚がフィルターの取水口に吸い込まれてしまうこともあります。
稚魚の飼育容器ではフィルターやエアレーションはない方が良いですが、もしどうしても設置したい場合は水の流れができないようにしたり、フィルターのストレーナーに目が細かいスポンジをつけるなどの対策をする必要があります。
水温と水質の変化
稚魚は些細な水温の変化や水質の変化で弱ってしまいますので極力水換えは控えた方が良いです。明らかに水質が悪化しているとわかる場合は水質や水温に注意し、稚魚を刺激しないように慎重に水換えをします。
水替えをしなくても良いように、水を汚す原因になる過剰なエサやりには気をつけ、食べ残したエサは必ずスポイトなどで除去します。