“濾過”とは?
濾過の種類
濾過には3種類あります。
- 物理濾過
- フィルターを使用して水草の切れ端やエサの残りなど水中のゴミを絡め取ります。水に溶け込んだ物質は除去できません。
- 化学濾過
- 活性炭やゼオライトなどで水に含まれる有害物質などの汚れを吸着して取り除きます。吸着ろ過とも呼ばれます。
- 生物濾過
- バクテリアの働きによって水に含まれる有害物質などの汚れを取り除きます。
飼育水が透明だからといってきれいな水だとは限りません。実際のところ物理濾過を省略しても、水が濁っていたり茶色くなって見た目は悪くなることはありますが、生き物が生きる上ではそれほど問題はありません。それよりも重要なのは水に含まれる目に見えない有毒物質を取り除くことで、そうするうえで生物濾過がとても重要です。
有害物質の除去は化学濾過でもできますが、吸着できる物質の種類がフィルターの素材によって変わるうえ、吸着できる量にも限りがあるので定期的に交換しなければなりません。生物濾過であれば有害物質の多くを除去することができますので化学濾過は補助的に使用される場合が多いです。
“生物濾過”と“濾過バクテリア”
濾過バクテリア
好気性細菌と嫌気性細菌
飼育容器内で繁殖するバクテリアには“好気性細菌”と“嫌気性細菌”の2種類があります。
“好気性細菌”は酸素を好む細菌で、活動や増殖するために酸素を必要とします。
“嫌気性細菌”は酸素を好まない細菌です。
濾過バクテリアは“好気性細菌”です。なので生物濾過を働かせるためには水中に溶け込んだ酸素が必要になります。
濾過バクテリアが棲む場所
濾過バクテリアは水中にも少なからず浮遊していますが、そのほとんどは物の表面に定着して繁殖します。フィルターの濾材、水槽のガラス面や底に敷いた砂利など、どこにでも濾過バクテリアは棲みつきます。濾過バクテリアは空気中にも存在するので、例え水道水から作ったばかりの飼育水でも時間がたてばバクテリアが自然に棲みついて繁殖し始めます。
濾過バクテリアを増やすには?
フィルターを設置する
フィルターには水中のゴミを絡め取る物理濾過の役割だけでなく濾過バクテリアをフィルター内に棲みつかせることによって生物濾過を行う役割もあります。スポンジや多孔質の濾材は表面積が大きく、濾過バクテリアを多量に定着させることができます。
底床を敷く
底床に砂利などを敷くことによって飼育容器の表面積が増え、濾過バクテリアが棲みつく場所を増やすことができます。それにより定着する濾過バクテリアも増えます。
エアレーションをする
濾過バクテリアの活動には酸素が必要なのでエアレーションによって水中に溶け込む酸素の量を増やすと濾過バクテリアの活動を活発にできます。
水を循環させる
水を循環させるとバクテリアが分解するアンモニアや亜硝酸がいきわたり、濾過バクテリアの活動を活発にできます。
水道水と濾過バクテリア
水道水には殺菌・消毒のために塩素が含まれています。この塩素は飼育している生き物にとっても有毒ですが、生物濾過を行う濾過バクテリアも死滅させてしまいます。なので、飼育水ももちろんですが、フィルターや砂利など飼育容器内の物を洗う際にもそこに定着した濾過バクテリアを失わないようにカルキ抜きした水を使用する必要があります。
“生物濾過”を機能させる
生物濾過が機能するまで
新しくはじめたばかりの飼育容器には濾過バクテリアが全くいないので、水質を安定させるには濾過バクテリアを繁殖させて生物濾過を機能させる必要があります。生物濾過がまだ機能していない飼育容器に生き物を入れると、一見水がきれいなように見えてもあっという間にアンモニアに満たされてしまい、生き物が生きられない水になってしまいます。
新しく飼育容器をはじめる“立ち上げ”と呼ばれる作業は、生物濾過を機能させるための作業でもあります。
- Step1~飼育容器をセットする
- 必要な用品を用意してセットします。飼育容器に底床を敷き、水草の植え付けなどをして水を入れます。この時点ではカルキ抜きしていない水でも良いですが、その場合はカルキが抜けるのを待つ必要があります。
- Step2~濾過バクテリアが定着し始めるのを待つ
- この状態では濾過バクテリアが全くいないので濾過バクテリアが定着し始めるのを待つため1週間ほど生き物を入れずに待ちます。濾過バクテリアは空気中にもいるので水を溜めておけば自然に繁殖します。フィルターやエアレーションを設置する場合はこの段階から稼働させます。
- Step3~生き物を少数入れる
- 濾過バクテリアの活動を活発にするには排泄物などから生じるアンモニアが必要になりますのでその発生源となる生き物を入れます。この役割を持たせる魚を“パイロットフィッシュ”と呼びます。この時点ではまだ生物濾過が完全に安定しておらず、水が汚れやすいので通常よりも生き物が死んでしまうリスクが高くなります。エサやりは控えめにし、3日に一度程度飼育水の3分の1程度を新しくします。パイロットフィッシュではなくエサだけを入れて水を少し汚す方法もあります。
- Step4~生物濾過が安定するのを待つ
- アンモニアを分解するバクテリアが繁殖し始めると水中の亜硝酸が増えてきます。これによって亜硝酸を分解するバクテリアが繁殖し始めます。
- Step5~生き物を増やす
- 2~3週間たつと生物濾過が安定し始めるのでアンモニアによって生き物が死んでしまうリスクが減り、徐々に生き物を増やすことができます。水換えは1週間に一度、飼育水の3分の1程度を新しくします。
- Step6~生物濾過が安定する
- さらに2~3週間たつと生物濾過が安定します。生物濾過が完全に安定したとしてもそれによって生じる硝酸塩を取り除く必要があるので2~3週間に一度飼育水の3分の1程度を新しくします。
すでに生き物を飼育している別の容器がある場合は、濾過バクテリアがすでに繁殖している水やフィルターの濾材、底床を新しい飼育容器へ分けることによってこの過程を短縮することもできます。
生物濾過の後に残る硝酸塩
硝酸塩が残るということ
生物濾過の結果残される硝酸塩はアンモニアと比較して毒素は弱いですが、それでも水中に溜まって濃度が上がっていくと有毒になり、生き物に悪影響を与えます。通常の濾過方法では硝酸塩は取り除くことができないので何らかの方法で取り除く必要があります。
硝酸塩を除去する方法
水換えで排出する
もっとも簡単で一般的な方法は水換えをして飼育容器の外に水ごと出してしまう方法です。飼育水を一部捨てて新たな水を入れることで硝酸塩の濃度を下げることができます。一般的に生物濾過が機能している屋内の水槽の水換えの頻度は2~3週間に一度必要と言われています。
一度に飼育容器内のほとんどの水を換えてしまうと水質が変わってしまい、繁殖している濾過バクテリアが死滅してしまう原因になるので、換える水の量は飼育容器の水の3分の1程度、多くても半分までにします。
植物に吸収してもらう
水草などの植物は水中の硝酸塩を肥料として吸収します。ただし、通常水槽内で育成できる水草では吸収できる硝酸塩の量は限られます。
脱窒菌の働きで分解する
脱窒菌は硝酸塩を分解して窒素に変え、窒素が空気中へ逃げていきます。この働きによって水中に含まれる硝酸塩を取り除くことができます。ただし、脱窒菌は嫌気性細菌で好気性細菌の濾過バクテリアとは繁殖のさせ方が異なりますし、維持するのも難しいです。嫌気性細菌の中には有毒な硫化水素を発生させる悪性のバクテリアもいますので注意が必要です。